運動時の水分補給について

運動時の水分補給はどのような点に注意すべきでしょう?

 

 
①なぜ水分補給が必要なのか

 運動をすると、体内では代謝量が増大するとともに、熱が発生します。発生した熱は血液の循環によって末梢組織へ拡散されたのちに、主に「汗」として体外に放散されます。この汗が運動の強度や長さによって多量になると、血液(血漿)、細胞間液、細胞内液量の減少につながり、血液の粘性が上がったり、体液中のミネラルバランスが乱れたりし、運動パフォーマンスを低下させるだけでなく、心臓の働きを乱すことにもなります。
 このような状態が続くと、体内に必要な水分量を確保するために脳から発汗を止める指令が出ます。こうなると体内の熱を外へ放散できなくなって熱中症を引き起こし、最悪の場合、生命を脅かす危険性があります。
 
②どのように水分を補給すればよいか

 水分補給は、運動前、運動中、運動後のそれぞれのタイミングで必要になります。
 運動の開始前に250~500mlほど摂取しておき、トレーニング中には「のどの渇きを感じる前に」150~250mlずつこまめに摂取することが望ましいとされています。また運動後には運動による損失分もしくは損失分の1.2倍程度の水分を補給することが推奨されています。
 補給する水分については、運動時間が1~3時間程度であれば5%程度の糖質を含むもの、3時間以上に渡る場合は、痙攣を予防するために糖質に加えてナトリウムを含む水分を摂取することが望ましいとされています(多くのスポーツドリンクはこのような条件を満たしています)。
 なお、摂取する水分は5~15℃程度の冷たいものを選ぶと、体内の深部体温の上昇を抑えるのに有効です。
 
 一般的に、運動中に自らの意思で摂取する水分量は必要量に満たないことが多いとされています。このため、定期的に水分補給タイムを設けるなどの対策をして、運動時の熱中症の予防に努めましょう。

自分の身体を知る

自分の体力や身体の可動域、チェックしていますか?

 
①自分の現在地を知ることの重要性

 学生時代には勉強でも体力でも定期的にテストを受ける機会があり、自分の現在地を知ることができます。ところが、大人になるとなかなかテストを受ける機会って少ない方も多いと思います。それに近いものは職場などでの定期検診でしょうか。
 ところで、定期検診を受けたときに、「運動不足なので、生活に運動を取り入れてくださいね!」といった注意を受けた経験がある人も多いのではないでしょうか。それを言われて、「よし、次の休みはフルマラソンをしてみよう!」となる方はいないとは思いますが、運動をしようにもどんな運動をすれば良いんだろう?とか、怪我しない程度の運動量ってどのくらい?と感じる人は多いかもしれません。
 運動を始めようとするときは、自分の体力を見つめ直し、弱い箇所、強い箇所を知り、回復したい部分、改善したいところ、向上させたい機能など、ある程度の目的を定めて取り組むのがより効果的です。
 
社内で体力テストをしてみたい。どのような体力テストがあるの?など、興味がわきましたら、是非一度、小社のホームページをご覧ください。
 

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②手軽に身体の可動域を知る

 スポーツ庁YouTubeチャンネルでは、身体のさまざまな部位の可動域などを確認する方法などを室伏広治長官自ら出演して開設する動画が多く投稿されています。こういったものを試してみるのもお薦めです。
第一弾の「肩甲骨の可動性」はこちら

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その他はこちらからご確認ください。

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体力テストでよくある誤解

学校で実施される新体力テストで誤解されがちなことについて取り上げてみました

 

 

①判定の基準年齢

 年齢というと、体力テストを実施したときの年齢で判定すると思いがちですが、新体力テストでは「テスト実施年度の4月1日現在の満年齢」と定められています。このため、同学年の人はすべて同じ年齢基準で判定されることになります。
 
②反復横跳びは得点式

 反復横跳びは1m間隔で引かれた3本のラインをサイドステップで往復して、どれだけラインを通過できるかを測定する種目です。何となく、ラインを通過した「回数」を記録すると思いがちなんですが、実施要項では「それぞれのラインを通過するごとに1点を与える」と記載されています。このため、反復横跳びは回数ではなく点数で記録することになります(なお、表現が違うだけで結果は同じです)。
 
③50m走の記録方法

 学校で行われる50m走の計測はほとんどのケースでストップウォッチを使って計測されていると思います。現在、ほとんどのストップウォッチは1/100秒まで表示されます。50m走の記録は1/10秒単位まで記入することになっているのですが、この記入時に1/100秒の単位を四捨五入するという誤解をされるケースがありますが、実施要項には「記録は1/10秒単位とし、1/10秒未満は切り上げる」と記載されています。このため例えばストップウォッチでの計測値が6.81秒の場合も6.87秒だった場合もいずれも6.9秒と記載することになります。
 
ハンドボール投げの記録方法

 ハンドボール投げは地面に書かれた直径2mの円内から園の中心から中心角30度で引かれた2本の直線内に投げ、ボール落下地点までの距離を記録します。この時の記録の記入方法について、実施要項では「記録はメートル単位とし、メートル未満は切り捨てる」と記載されています。種目によって切り上げるケース、切り捨てるケースがあるので注意が必要です。
 
体力テスト実施前には、あらかじめ実施要項を再確認してみましょう。

 

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サプリメントとドーピング違反

ドーピング違反が起こるのは、特殊な薬物を摂取したときだけだと思いますか?

 

 

①ドーピング違反とは

 ドーピングとは、競技力の向上に寄与すると考えられる、使用を禁止された薬物などを使用することを言います。
 世界アンチ・ドーピング規程によると、「競技者の生体からの検体に、禁止物質、あるいはまたその代謝物またはマーカーが存在すること、禁止物質・禁止方法を使用すること、またはそれを保有したり使用を企てること、検体の採取を拒否する」などと定義されています。
 また、ドーピング違反は、知らずに摂取したなど、故意ではない場合でも違反となります。
 
サプリメントと禁止薬物

 意図してドーピングをすることはもちろんダメですが、アスリートは故意ではないドーピング、いわゆる「うっかりドーピング」に気を付ける必要があります。
 例えば、一般的な医薬品の中にもアンチ・ドーピング規程で禁止されている成分が含まれている物もあるので、服用時には注意が必要になります。ただ、医薬品は成分表にすべての原材料などを表示する義務があるため、その部分をチェックすればある程度避けることが可能です。
 一方で、サプリメントは「食品」に分類されています。食品については法律上すべての原材料を表示する義務がないため、表示にない物質が含まれる可能性があります。もし、その物質に禁止成分が含まれていた場合でも違反となります。実際に、サプリメントとして服用していたものの中に含まれていた成分によって、失格となった選手も多数います。
 
③スポーツファーマシスト

 現在では、アスリートやスポーツ愛好家に対して、医薬品の適正使用やアンチ・ドーピングに関する情報提供、アンチドーピング活動の周知・啓発活動などを公認スポーツファーマシストが行っています。
 
 この資格は、薬剤師の資格をもつ人が所定の課程を収めることで取得できる資格で、2010年から始まっており、2021年4月1日時点で11,489名が認定されています。
 

 

体力テストの今昔

世代によって学校で受けた体力テストは異なります。あなたが受けたテストはどちらですか?

 

 

①「スポーツテスト」と「新体力テスト」
 
日本では、国民の体力の現状を把握するために、毎年「体力・運動能力調査」が実施されています。この調査は前回の東京オリンピックが行われた1964(昭和39)年以来、毎年実施され、毎年、「スポーツの日」にあわせて結果が公表されています。
 
この調査は1964年~1998(平成10)年までは「スポーツテスト」を利用して、1999(平成11)年以降は「新体力テスト」を利用して実施されています
 
それではここで、それぞれのテスト項目の比較表を見てみましょう。

 

文部科学省「新体力テスト~有意義な活用のために~」p.12より作成

 

以前のスポーツテストは種目数が多かったことがわかりますね。

 

②なぜ体力テスト項目は変わったの?
 
体力テストの項目はなぜ変わっていったのでしょうか。これには、国民の体型の変化やスポーツ医・科学の進歩によるテストの妥当性への検証、高齢化の進展などが影響を与えました。
 
特に測定実施上の立場、あるいは学問的な見地から再校が指摘され、除外された項目については以下のような理由が挙げられています。
 
1.踏み台昇降運動
  調査開始時比べて児童生徒の身長が大きく伸びて踏み台の高さが相対的に低く なったこと、所要時間の長さ、脈拍計測の誤差など。
 
2.背筋力
  背筋力計による測定では必ずしも背筋力のみを測定できないこと、測定時の姿 勢や動作によって傷害が発生する可能性があることなど。
 
3.伏臥上体そらし
  柔軟性をはかる項目だったが、測定値が背筋力に左右されるところが大きいこ と、測定時の姿 勢や動作によって傷害が発生する可能性があることなど。
 
4.斜め懸垂腕屈伸
  測定時に正しい姿勢をとることが難しく、誤差が非常に大きいことなど。
 
5.立位体前屈
  測定時の足場が床面より高いため、転倒事故を発生しやすいこと、反動をつけ た場合に、腰痛の引き金になることなど。

 

データの継続性をできるだけはかりつつ、実施のしやすさや危険度の低減などさまざまな検証のもとに、「新体力テスト」は誕生し、現在でも活用されています。
 
自分が学生時代に受けたテストはどちらでしたか?
職場や家庭などでの話のネタにしていただければ幸いです。
 
<参考文献>
 
文部科学省「新体力テスト~有意義な活用のために~」,2000年

 

歳をとると衰えるだけ?

加齢によって、私たちの身体は衰えるだけでしょうか?

①筋肉量の変化

 私たちの身体は年齢を経るにつれ衰えていくというイメージをもっている方が多いと思います。実際のところ、どのように変化していくのでしょうか。
 日本人筋肉量の加齢による特徴についての研究データによって、下の図のように変化の傾向があるとされています。
 

谷本他:日本人筋肉量の加齢による特徴.日老医誌 47:52-57.2010.より引用(一部改変)

 

この調査は一人の人の変化を追って行った縦断的な調査ではなく、調査時点での横断的な調査から導き出されたものになりますが、加齢に従って筋肉量は低下傾向にあり、男性で低下量が多いことがわかります。

 

②歳をとると筋肉は増えない?

 先ほど見たように、全体的な傾向としては加齢によって筋肉は低下していく傾向にあります。それでは高齢になると、もう筋肉量を増やすことはできないのでしょうか。
 
 この答えは「ノー」です。
 
 加齢によって筋肉量が低下する大きな原因は運動量の低下です。いくら高齢であっても、適切な運動によって筋肉量が増えることがわかっています。たとえば、自治体などが主催する高齢者向けのトレーニング教室などでも、筋力の向上が報告されていてます。
 

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健康寿命を少しでも伸ばすためにも、思い立ったその日から、少しずつでもトレーニングを生活の中に取り入れていきましょう。

 

 

世界労働安全衛生デー

今日は何の日?というテーマを取り上げてみました。

 

①世界労働安全衛生デーとは

 4月28日は「世界労働安全衛生デー」と定められています。
 これは、1996年に国際自由労連(ICFTU、現在の国際労働組合総連合(ITUC))が、この日を「死傷労働者を追悼する国際的な記念日」とし、さらに2002年に国際労働機関(ILO)が国連の国際デーの1つに定めました。
 そして、翌2003年に「世界労働安全衛生デー」と名称を変更し、労働災害や職業病の予防など、職場における安全・健康文化の促進に人々の関心を喚起させる日と定めました。
 なお、「世界労働安全衛生デー」が4月28日となったのは、1914年のこの日に、カナダで包括的な労働者災害補償法が成立したことに由来します。
 
②世界労働安全衛生デー 2021年のテーマ

 世界労働安全衛生デーには、毎年テーマが設定されています。
 2021年のテーマは「危険を予測し、準備し、対応する-回復力ある労働安全衛生システムに今すぐ投資する」とされています。
 これは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症パンデミックから得た経験などを元に、現在および将来の危機を回避するために、労働安全衛生システムを強化して、個人・組織ともに通用する「さまざまな環境・状況に対しても適応し、生き延びる力」を構築することに焦点をあてるものです。
 
 この記事によって、4月28日が「世界労働安全衛生デー」であることを知り、自分の職場における労働安全衛生について意識を向けるきっかけとなれば幸いです。