体力調査の結果について

「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果が発表されました。

 

 
①体力調査には2つある

 日本で行われている全国規模の体力調査には、「体力・運動能力調査」と「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の2つがあります。
 1つめの体力・運動能力調査は以下のようなものとなります。「体力・運動能力調査は、国民の体力・運動能力の現状を明らかにするため、最初の東京オリンピックが開催された昭和39年以来、毎年実施されている調査です。これだけ継続的に幅広い年齢層(6~11歳、12歳~19歳、20歳~64歳、65歳~79歳)を対象として、国民の体力・運動能力を把握する調査は世界にも類を見ない貴重なものであり、本調査の結果は、国民の体力つくり、健康の保持・増進に資するとともに、体育・スポーツ活動の指導と行政上の基礎資料として広く活用されています。」(「体力・運動能力調査」概要より引用)
 この「体力・運動能力調査」は例年スポーツの日にあわせて結果が公表されており、新聞紙面などで目にする機会も多いのではないでしょうか。新聞紙上では主に小学生から高校生までの年代を取り上げているため、成人から高齢者まで対象となった調査であることを知らない方もいらっしゃるかもしれません。
 
 「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」については、次の項目で説明します。
 
②全国体力・運動能力、運動習慣等調査

 この調査は2008(平成20)年度から始まった調査で、日本全国の小学5年生、中学2年生全員を対象として行われる、体力ならびに運動習慣等に関する調査です。約200万人が調査対象となる大規模な調査で、例年12月頃に結果が公表されています。
 体力に関する調査は新体力テストと同じ8種目で、それに加えて生活習慣や食習慣、運動習慣などが調査されています。
 2022年12月に公表された2022(令和4)年度の調査結果によると、8つの種目の成績から算出される「体力合計点」の全国平均が2008年の調査開始以来もっとも低かったことが報告されました。
 スポーツ庁では、低下の主な要因として
  ①運動時間の減少
  ②肥満である児童生徒の増加
  ③朝食欠食、睡眠不足、スマートフォンをはじめとする映像視聴時間の増加といった生活習慣の変化
 この他、新型コロナウイルス感染症の影響によるマスク着用中の激しい運動の自粛などの影響をあげています。
 
 このような調査結果を知り、自らの体力について関心を持つだけでなく、社会全体の傾向についても目を向け、自分のできる範囲で取り組める改善方法はないかどうかについても考えてみるきっかけにしてみてはどうでしょう。

 

www.e-stat.go.jp

 

www.mext.go.jp

熱中症予防とWBGT値

「暑さ指数(WBGT値)」を知っていますか?

 

 
①「暑さ指数(WBGT値)」とは何か

 近年、熱中症予防のための1つの指標として「暑さ指数(WBGT値)」が用いられることが増えてきました。WBGTは「Wet Bulb Globe Temperature」の頭文字を取った略称で、「湿球黒球温度」と訳されます。
 WBGTは湿球温度(湿度)、黒球温度(輻射熱)、乾球温度(気温)の3項目から以下のような計算式を使って算出されます。
 
 屋外で日射のある場合 WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
 室内で日射の無い場合 WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
 (表示単位には気温と同様「℃」が使用される)
 
②WBGT値の使い方
 
 WBGT値は現在ではさまざまな場面での活動指針として活用されています。以下の3つの表をみて活動の際の参考にしてください。

グラフ1

グラフ2

グラフ3

 

運動とマウスピース

運動中に使用するマウスピースにはどんな役割があるの?

 

 
①マウスピースとは

 運動中に使用するマウスピースは「マウスガード」ともいわれ、運動中の衝撃によって口腔内が損傷するのを防ぐ働きがあります。特にボクシングなどの格闘技やアメリカンフットボールなどの競技では、口の付近に打撃や衝撃を受けることが多くあるため、競技中の使用が義務化されています。
 また近年では、けがの予防だけでなく、使用によって歯を十分に噛み合わせることができるために、使用していないときよりも、強い筋力の発揮が可能になることがわかってきました。
 
②マウスピースでパフォーマンスが向上する?

 マウスピースの装着によるスポーツパフォーマンス向上の理由としては以下のようなものが考えられています。
  1.顎の位置の安定
  2.顎関節の保護
  3.強い嚙み締めによる歯のすり減りの予防
 ただ、現状では確固たる結果や理由について十分に解明できているわけではありません。
 
 
 ちなみに以前は、たとえば球技などの競技中に声によるコミュニケーションが重要になる種目では敬遠されることが多くありましたが、自分の歯や噛み合わせの強さなどに応じたオーダーメイド品の普及などもあり、マウスピース装着時でも通常通り声を出せるため、現在では、幅広い競技で使用されるようになってきています。

冷湿布と温湿布

どちらの湿布を使えばいいの?

 

 
①冷湿布

 冷湿布には消炎鎮痛作用成分のほかに、冷たく感じさせるメントールや、冷却作用をもたらす水分が含まれているため、熱をもった炎症や腫れに効果があります。このため、具体的な使用方法としては、打ち身やねんざなど急性症状がある患部に使用すると良いと考えられています。
 
②温湿布

 温湿布には消炎鎮痛作用の成分のほかに、トウガラシエキスなどが含まれ、血行を良くする効果があります。このような効果があるため、温湿布は肩こりや腰痛など慢性の症状に使用すると良いと考えられています。
 
③湿布使用時の注意点

 実際には冷湿布も温湿布も同じ消炎鎮痛成分を使用しているであれば薬としての効果は同じなので、どちらを使用するか迷ったときには、どちらを使用した方がより心地よく感じるかで選択しても良いとされています。
 
 ただし、湿布のなかには、非ステロイド性消炎鎮痛薬と呼ばれる成分を皮膚から吸収させる目的で配合してあるものがあります。この成分は、喘息の持病を持つ人に発作を誘発させる可能性があるので、あらかじめ医師・薬剤師に相談することが大切です。

職場と健康管理

健康管理は誰がするもの?

 

 
①健康管理をするのは誰か

 私たちの健康は本来、個人的に自由なもので、他社や社会の拘束を受けないものです。個人が受け入れている以上は、どのような健康状態で、どのような体型で、どのような体力状態であってもよいのです。
 一方で、私たちが労働をするといった社会的活動をしている限り、必要最低限の拘束を受けることがあるということは受容する必要があります。例えば、職場における健康管理の一環として、労働者に対する定期的に健康診断の実施が、法律で使用者に義務づけられています。
 
②企業における健康管理

 労働災害や職業病の防止のためには、労働者を取り巻く環境や労働条件を改善していく必要があり、これらは主として企業や使用者の努力に委ねられています。一方で、そこで働く労働者の健康状態をよく管理することも必要となります。ここでの「健康管理」とは、健康状態を見守ることで、労働者の健康を使用者や産業医が一方的に規制するといった意味ではありません。
 昨今「健康経営」という観点からも、労働者に対して法に定められた、あるいはそれ以上に充実した健康管理を実施することは奨励されるべきです。とはいえ、それが一方的なものにならないよう、健康管理がどのような意味を持つものであるのかといった健康教育を十分に行うことが望まれます。
 
 健康・安全についての理解を深めることで、労働者が自律的によりよい健康状態を維持していくという意識を持てるようにすることが大切です。

厚底ランニングシューズ

ジョギングするなら厚底シューズ?

 

 
①厚底ランニングシューズ

 ランニングシューズといえば一昔前までは薄いソールのものが主流でしたが、近年のマラソンや駅伝などの大会では、ほとんどの選手が厚いソールのものを着用しています。厚底のランニングシューズが世界的に初めて登場したのは、2016年に開催されたオリンピック・リオデジャネイロ大会のマラソン競技で優勝したケニアのエリウド・キプチョゲ選手が着用したときであると言われています。この時はまだ製品化されたものではなく、ナイキ社の試作品だったそうです。ちなみに、キプチョゲ選手は2021年に開催されたオリンピック・東京大会でも厚底ランニングシューズを着用して優勝しています。
 
②メリットとデメリット

 厚底ランニングシューズが多くの競技者に利用されているのには、当然多くのメリットを感じているからです。おもなメリットとして以下のようなことがあげられます。
【メリット】
 〇高いクッション性
 〇軽量で推進力がある(カーボンプレートが入っているため)
 
 メリットを見ると、使わない理由は無いように感じますがデメリットもあります。
【デメリット】
 〇厚底であるために不安定感がある
 〇走り方をシューズの特性に合わせないとケガのリスクがある
 
 不安定感については、厚底のデメリットとして想像がしやすいのですが、この部分を解消するにはある程度の筋力が必要になります。

 一方、厚底にあった走り方の特性とはどういう事でしょうか。厚底ランニングシューズは走る際につま先から着地するフォアフット走法用に作られている製品が多くなっています。このため、日本人に多いと言われる踵から着地するヒールストライク走法で厚底ランニングシューズを着用すると特性に合わず、捻挫や筋肉系の故障といったケガのリスクがあると言われています。
 
 ランニングシューズを選ぶ際には、流行だけではなく、自分の目的や走り方の特性に合ったタイプのものを選択する必要があるでしょう。

運動とルーの法則

「ルーの法則」のことを知っていますか?

 

 
①ルーの法則ってなに?

 「ルーの法則」とは、ドイツの発生学者「ヴィルヘルム・ルー(Wilhelm Roux)」(1850-1924)が唱えた生理学における基本法則のことです。ルーの法則によると『生物の体は、内外の環境に適応して個体の機能を変えるという特性をもつ』とされ、一般に、生物が時間をかけて外界に適合するように、習性・形態などを変えていくことを適応といいます。
 私たち人間には、このような適応能力が備わっているので、適正なトレーニングを行うことで様々な機能や能力が改善されるのです。
 
②プラスばかりの適応だけが生じるわけではない

 ルーの法則は環境に応じて私たちも適応して変化していくことを示しているのですが、ときとしてマイナスの適応をする場合もあります。以下の4つのパターンについて、それぞれどのような適応を示すか考えてみましょう。
 1.身体の機能を働かせる機会が少ない
 2.ある程度の頻度・強さで身体の機能を働かせている
 3.活発な頻度・強さで身体の機能を働かせている
 4.頻度が多すぎたり、無理な強さで身体の機能を働かせている
 
 上記4つのパターンを考えてみると、1と4はマイナスの適応、2は現状維持、3はプラスの適応を示すと考えられます。
 
 様々な場面で私たちの身体機能を高めようとするときにはこのような法則を頭の片隅に置いておくとよいでしょう。