労働災害において一番多いのが「転倒」となっています。今回はその実情についてご紹介します。
①「転倒災害」とは何か
中央労働災害防止協会が発行している「労働災害分類の手引き」によると、「人がほぼ同一平面上で転ぶ場合をいい、つまずき、滑りにより倒れた場合等をいいます。車両系機械等とともに転倒した場合も含む。交通事故は除く。」とされています。「ほぼ同一平面上」という言葉が示すように、階段や斜面で発生するものは「墜落、転落」という分類に区分されます。
②転倒災害の推移
転倒災害の推移をグラフに表してみました。
転倒災害は2005年以降、事故の型の分類のなかでは最も多い災害になっています。
小社が発行している、JFEスチール式「安全体力®」機能テストを宣伝する場面においても、企業の安全衛生担当者の方から、「転倒災害」に加えて、その予備軍である、転倒に関する「ヒヤリ・ハット」の事例が増えていることをお伺いする機会が多くあります。
③転倒災害(あるいはその予備軍)が増えているのはなぜ?
職場では、段差をなくす、滑りにくい加工を施す、滑りにくい靴を着用するといった対策は進められています。では、なぜ転倒災害やその予備軍は増えているのでしょうか。
ここで私たちがよく耳にするのが「職場の高齢化」というキーワードです。2013年に施行された高年齢者雇用安定法の改正によって、継続雇用制度を原則として希望者全員を対象とすることになりました。
これによって、企業では
〇65歳までの定年の引き上げ
〇65歳までの継続雇用制度の導入
〇定年の廃止
の3つのうちいずれかの実施が義務づけられ、実質的に職場の平均年齢が上がることになりました。
私たちは年齢が上がるにしたがって、適切な運動を怠ると体力が低下していきます。このため、若い時であれば当たり前のように意識しなくてもできていたことが、いつの間にかできなくなることもあります。
そうしたものの一つに、足先の上がる角度の低下もあると言われています。この影響もあってか、これまでであれば引っかからなかったような、小さな段差でつまづく、あるいは段差のない平面の床でつまづくといった事例が増えている可能性があります。
④まずは現状を把握することをお勧めしています。
普段の生活の中で、自分の体力を客観的に把握することは難しいでしょう。健康診断に加えて、体力についても診断することで、体力低下による労災リスクについて意識することができ、個人の運動習慣の習得にもつながります。
気になった方は、ぜひ第一学習社の体力テスト商品をご覧ください。