マスクをしてトレーニングすると低酸素トレーニングの効果はある?

コロナ禍で生活する中で、私が疑問に思ったことを紹介します。

※なお、マスク着用をしての運動は熱中症のリスクなども指摘されています。負荷を軽くすることや水分の摂取等によって、リスク管理に十分に配慮してください。

 

 

①マスクをつけた生活

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、私たちはいま、生活の中でマスクを着用して過ごす時間が増えています。マスクを付けていると、付けていない時と比べて「息苦しさ」を感じませんか? 私はいま、定期的にジョギングをしているのですが、走るときにマスクを付けると歩く時とは比較にならないほどの息苦しさを感じます。
そこで思ったのです。いつもより息苦しく感じるということは、低酸素トレーニング的な効果があるのではないか、と…。

 

 

②低酸素トレーニングとは

マスクをつけて運動することで感じる息苦しさ、そこから低酸素トレーニング的な効果があるのではないかと感じた私ですが、そもそも低酸素トレーニングとはどのようなものか、簡単に説明したいと思います。
一般的には持久力の向上を狙って行われるもので、高地のように空気が薄い(酸素濃度も低い)場所では、平地よりも私たちは体内に酸素を取り込みにくくなります。一方で、私たち人間には、環境に適応する能力が備わっているため、酸素濃度が低い場所に長時間滞在すると、必要な酸素量を効率よく摂取しようとする変化が起こります。このような人間の適応能力を利用して有酸素能力(持久力)を高めようとするのが低酸素トレーニングです。

 

 

③マスク着用は低酸素トレーニング代わりになる?

調べた結果、結論からいうとNoでした。
低酸素トレーニングができているかどうかは、「動脈血酸素飽和度(SpO2)」という動脈血中にどの程度の酸素が含まれているかを示す指標によってわかります。SpO2は通常98~95%程度で推移しており、運動をしたとしても90%を下回ることはありません。ただし、低酸素トレーニング下では、90%を下回るとされています。
一方で、マスクをつけて運動をしているときのSpO2について調べた研究では、かなりきつい強度で運動をした場合でも平均で96%までしか低下せず、低酸素トレーニングの指標である90%を下回ることはなかったと報告されています。これは肺に入る空気の濃度は変わらなかったことを示しているようです。

 

 

④全く効果がないわけではないかもしれない

マスク着用による運動は、前項で説明したように「低酸素トレーニング」という観点から言うと効果はありませんが、息苦しいという実感はあるはずです。では、全くトレーニングの効果はないのでしょうか?
マスク着用によって、肺に入る空気の濃度は変わりませんが、取り込める量は減ってしまいます。このため、マスク着用による運動によって、より多くの空気を取り込む機能が改善される可能性は指摘されています。(この結果についての研究はまだ進んでいませんでした)

とはいえ、やはり早くマスクなしで思いっきり運動ができる環境になって欲しいものです。

 

<参考文献>

国立スポーツ科学センター「スポーツ医科学最前線 第14回」

●Sportsmedicine 2020 No.221「低酸素環境でのトレーニングにおける正しい理解」